抗体とワクチンの関係は?【抗体検査がわかる:第2回】
前回の記事では、人の免疫には自然免疫と獲得免疫(適応免疫)があり、一度侵入したことのある病原体との戦いでは獲得免疫が大きな役割を果たしていることをお伝えしました。獲得免疫が働く仕組みにも種類がありますが、免疫力強化には「抗体」が重要です。
感染症の不安が続く毎日ですが、抗体を増やし免疫力を高めるにはどうしたら良いのでしょうか。また、自分の抗体がどれくらいあるのか知ることはできるのでしょうか。
この記事では、抗体を増やすための基本的な作戦であるワクチンと抗体の関係、そしてワクチンの効果を確認するための方法を解説します。
ワクチンを打って抗体を増やす
抗体を増やすための方法として基本であり中心となるのが、ワクチンです。すでに多くの方が実践されていますが、初めの頃は予約が中々取れないことが問題になったり、ファイザーとモデルナどちらが良いのか議論されたり、非常に身近な話題となっていますよね。
ワクチンの歴史は古く、1798年にイギリスで牛がかかる天然痘を用いた天然痘予防の論文が報告されたのが初めてと言われています。現在では様々な疾患に対するワクチンが開発され、日本ではB型肝炎や四種混合ワクチンなど多くの予防接種が義務化され多くが赤ちゃんのうちに実施されています。
ワクチンは病原体の一部や病原性を弱めたものを体内に入れ、獲得免疫をつけることを目的としています。獲得免疫はワクチンに含まれる成分や、ワクチンを接種したことにより体内で合成される成分を認識し、抗原として記憶します。病原体を記憶した獲得免疫は、実際に病原体が体内に入ってくると迅速に反応し、効率よく働くことができます。
各々の病原体は異なる特徴を持つため、それぞれに対応したワクチンが必要です。例えば季節性インフルエンザは流行するウイルスが持つ特徴が毎年変化するため、毎年流行すると予想される株に対応したワクチンを接種する必要があります。新型コロナウイルスもどのように変化していくかは分からず、今後も継続してワクチン接種が必要になるかもしれません。
ワクチンで免疫力強化!二次免疫応答とは
ワクチンの効果を考える上で重要な体の反応として「一次免疫応答」「二次免疫応答」があります。一次免疫応答というのは、初めて病原体と接した時に起きる免疫の反応のことです。体内では病原体を記憶し、抗体が多く産生されるという応答が発生します。
二次免疫応答は、二回目に病原体と接した時に起きる反応のことで、初回とは違った方法で初回よりも素早く大量の抗体が産生されます。多量の抗体は免疫を強く活性化し、病原体を効率よく排除することができます。
ワクチンはこの仕組みを通じて、免疫力を大幅に強化することができます。言い換えれば、ワクチンにより一次免疫応答をしっかりと得ることが重要である、ということが分かります。
ワクチン不全に注意
免疫力を強化するにはワクチンにより免疫応答を得ることが必須なのですが、ワクチンの効果は100%確実ではありません。ワクチンを打っても一次免疫応答が起きずに、効果が不十分となることがあります。これをワクチン不全といいます。
ワクチン不全の発生にはワクチン自体や投与に関する要因、接種される側の要因があります。ワクチンの要因には保管方法が適切でない場合や使用期限切れ、投与の要因には注射方法や投与量の間違い、接種される側の要因には健康状態や年齢などがあります。
ワクチン不全を防ぐ方法として有効なのが、複数回接種することです。新型コロナウイルスのワクチンを繰り返し接種するのはワクチン不全を防止するとともに、変異していくウイルスに対応するという目的があります。
ワクチンの効果を見る方法
ワクチンを接種し一次免疫応答がしっかり起きているかどうか確認する一つの方法が、抗体検査です。抗体検査は血液を少量採取して、血液中の抗体量を測定する検査です。例えばワクチン接種前と接種後で抗体量を測定し、しっかりと上昇していればワクチンの効果が出ていそうだと考えられます。
また、ワクチンの効果は一定期間が過ぎると減少していくことが知られています。ワクチンの効果がどれくらい発揮されるのか、どれくらいの期間持続するのかは個人差が大きく人それぞれです。自分自身の免疫がどのような状態にあるのか、抗体量検査が一つの判断材料になると考えられます。
ただし現時点では、抗体検査の結果が実際の感染予防や症状軽減にどの程度関係するのか、解明が試みられている段階であり、はっきりとした基準は定められていません。~以上だから大丈夫、~以下だから急いでワクチンを打たねば、という判断ができるまでにはまだ時間がかかることに注意が必要です。