抗体検査で何がわかるの?抗原検査とは違う?仕組みは?【抗体検査がわかる:第8回】

新型コロナウイルスの流行によって、検査という言葉に触れる機会が増えたかと思います。PCR検査、抗原検査、抗体検査などの種類がありますが、それぞれに特徴があり分かることも異なります。今回は抗体検査とはどのような検査なのか、特に混同されやすい抗原検査との違いを中心に解説していきます。

抗原検査と抗体検査の違い

抗原も抗体も、体内に侵入した異物を除去する「免疫」に関わる用語です。「抗体」は異物に存在する目印に結合して、体内から取り除く働きを持っています。異物の種類ごとにそれぞれ異なる抗体が作られ、一度異物と出会うとその目印を記憶した抗体が体内に備えられます。そして、この抗体を産生させる分子を「抗原」と呼びます。

つまり、抗原検査は異物が存在するかどうかを調べる検査、抗体検査とは異物に結合する抗体があるかどうかを調べる検査ということです。

新型コロナウイルスに関連する検査を例に挙げると、抗原検査では体内に異物であるコロナウイルスが存在するかどうか、言い換えると、現在、新型コロナウイルスに感染しているかどうかが分かります。これに対して、抗体検査では新型コロナウイルス抗体を持っているかが分かります。新型コロナウイルスがあれば、過去に感染していたことが分かります。また、ワクチンによっても抗体は作られますので、ワクチン接種によってできた抗体も検出することができます。

次に抗原検査、抗体検査の原理について解説していきます。コロナウイルス専用の抗体は、抗原である新型コロナウイルスのみに結合し、そのほかの異物、例えばインフルエンザウイルスには基本的には結合できません。抗体にみられる、決まった異物としか結合しない特徴は抗体の「特異性」と言われています。

抗原検査の仕組み

あらかじめ新型コロナウイルス専用の抗体を用意しておいて、調べたい検体を混ぜた時、検体の中に、抗原である新型コロナウイルスが存在していたら、抗体が結合します。反対にウイルスが存在していなければ抗体は結合できません。そこで、抗体が結合したかどうかを確認できるように工夫したものが新型コロナウイルスの抗原検査です。

抗原検査では、イムノクロマト法という方法が広く用いられています。イムノクロマト法では細工を施した2種類の抗体が使用されます。

まず一つ目は目印として色をつけた抗体。この色がついた抗体がくっつくことによって、検体中の新型コロナウイルスに目印がつけられます。

もう一つの抗体は検体の通り道に固定された新型コロナウイルス抗体です。もし新型コロナウイルスが含まれていなければ検体は素通りしていきますが、新型コロナウイルスが含まれていれば、抗体にキャッチされて固定されます。固定された新型コロナウイルスには目印として色がついているため、キャッチされていることが目視で分かり、陽性だと判定できるという仕組みです。

イムノクロマト法の特徴として挙げられるのが、簡単に短時間で結果を判定できることです。検体をのせて15分ほど待ち、色の有無で結果が分かるため、非常に手軽にできる検査です。

抗体検査の仕組み

抗体検査は大きく2つに分類することができます。一つ目は抗体を持っているかいないかのみを調べる検査(定性検査)、もう一方は抗体の量を測定する検査(定量検査)です。

このうち、定性検査では一般的に抗原検査と同様にイムノクロマト法が用いられています。抗体検査の場合、検出したいのは「抗体」ですから、コロナウイルス抗体と結合する抗体が使用されます。少し分かりにくいですが、コロナウイルス抗体を異物だと認識する抗体をあらかじめ用意しておいて、コロナウイルス抗体の有無を調べるという方法です。

抗体量を測定する定量検査では、ELISA法や類似のECLIA法という方法などが用いられています。これらの検査には専用の試薬や機械が必要となるため、検査所で結果の判定を行うのが一般的です。そのため、基本的には病院か、または郵送検査を利用することになります。イムノクロマト法ほど簡単ではない代わりに精度が高く、微量なサンプルの測定や、細かい数値まで調べることができます。

ELISA法も、基本的にはイムノクロマト法と似た仕組みになっており、2種類の細工を施した抗体、つまり、目印付き抗体と固定するための抗体を用います。異なるのは「目印付き抗体」のほうです。ELISA法では化学反応を促進する「酵素」を目印に用います。酵素を目印に使うことで感度が高く、細かい数値まで測定できる検査となっています。

まとめ

最後に、抗体検査の仕組みや特徴をまとめます。 今、新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる抗原検査とは異なり、抗体検査は新型コロナウイルスと戦う抗体を持っているかどうかを調べる検査です。抗体検査には大きく分けて2種類、抗体の有無を調べる定性検査と抗体量を調べられる定量検査があります。ご自身の新型コロナウイルス抗体の有無やその量を調べたいときには抗体検査を受けてみてください。

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