抗体検査をするタイミングはいつ?【抗体検査がわかる:第9回】
自分が抗体を持っているかどうか、言い換えるとウイルスに対する抵抗力を調べることは、新型コロナウイルス感染対策を考える際に有効な手段です。抗体の有無に加え、抗体量も検査できるのが抗体検査ですが、いつ受けるのが適切なのでしょうか?
抗体量は常に一定というわけではなく、状況によって変動することが分かっています。また、ワクチン接種や感染の状況が同じでも、個人差があります。今回は、抗体検査を受ける適切なタイミングを知るために、抗体が作られるメカニズムや個人差についてみていきましょう。
抗体の量は時間の経過とともに変化する
抗体は体内に侵入した異物を除去するタンパク質です。異物が体内に侵入すると、その異物に対応する抗体が作られます。異物に存在する目印(抗原と言います)に結合して、体内から取り除く働きを持っています。抗体は異物ごとに特別なものが作られ、新型コロナウイルスには新型コロナウイルス専用の抗体が作られているのです。
この新型コロナウイルスを例に考えると、感染した場合、体内で「抗体産生細胞」が、ウイルスと戦うために抗体を作ります。また、感染しなくてもワクチンを接種することによっても抗体が作られます。
しかし、感染でもワクチン接種でも、一時的に抗体量は増加するものの時間の経過とともに再び減少していきます。せっかく一度抗体が作られたにもかかわらず、すぐに抗体量が減少してしまうのはなんだかもったいない気がしますよね。でも人の免疫はよくできており、一度抗体が作られたという「記憶」は無駄にはなりません。
体内には、免疫を記憶する細胞(メモリーB細胞、メモリーT細胞)という細胞が存在しており、抗体を産生したという情報を記憶しています。これらの細胞の働きによって、一度新型コロナウイルスに出会ったら、二度目以降は、素早くたくさんの抗体産生細胞を作り直すことが可能です。このため、初めて感染した時に比べて、短時間で新型コロナウイルス抗体量が上昇します。ワクチン接種時も同様に、二度目以降は素早く抗体が作られます。
このように、抗体量は常に一定というわけではなく、感染直後、またはワクチン接種直後に一時的に上がり、時間の経過とともに減少して、再度ウイルスに出会うと素早く上昇するというような変動がみられるのです。
抗体の量には個人差がある
ここまでは、抗体量の時間による変化を見てきましたが、続いて、実際に社内で行った抗体検査によって得られた以下のデータをもとに、個人差について見ていきましょう。
まずは、AさんとBさんを比較してみましょう。年齢、性別がともに近く、また2人とも罹患歴があり、同日にワクチン接種2回を行った点も共通しています。2人は同日に抗体検査を行いましたが、抗体量はAさんが73,000、Bさんが19,230と3倍以上違っていました。
次に、CさんとDさんでは、Cさんがワクチン接種2回、Dさんがワクチン接種3回を行っており、最後のワクチン接種日から抗体検査日までの経過日数は同程度となっていました。抗体量ではワクチン接種回数の少ないCさんのほうが約2.4倍高くなっています。
最後に、ワクチンを接種していない、EさんとFさんをみてみましょう。2人とも新型コロナウイルスに感染したことがあり、感染後5か月以上経過したのちに検査を行ったところ、抗体量はワクチン接種済みのA~Dさん4名に対してかなり少ないことが分かりました。
ここで取り上げた検査結果は、ごく一部の人の結果であり、すべての人に当てはまるものではありませんが、ワクチン接種の有無などの状況によって抗体量には違いが生じ、時間によっても変化します。また、年齢、性別、罹患歴、ワクチン接種回数などの状況が同じでも個人差が表れることが分かりました。
そのため、定期的に抗体検査を受けて、ご自身の感染対策を考えるための参考にされることをお勧めします。