抗体検査で何がわかるの?抗原検査とは違う?仕組みは?【抗体検査がわかる:第8回】

新型コロナウイルスの流行によって、検査という言葉に触れる機会が増えたかと思います。PCR検査、抗原検査、抗体検査などの種類がありますが、それぞれに特徴があり分かることも異なります。今回は抗体検査とはどのような検査なのか、特に混同されやすい抗原検査との違いを中心に解説していきます。

抗原検査と抗体検査の違い

抗原も抗体も、体内に侵入した異物を除去する「免疫」に関わる用語です。「抗体」は異物に存在する目印に結合して、体内から取り除く働きを持っています。異物の種類ごとにそれぞれ異なる抗体が作られ、一度異物と出会うとその目印を記憶した抗体が体内に備えられます。そして、この抗体を産生させる分子を「抗原」と呼びます。

つまり、抗原検査は異物が存在するかどうかを調べる検査、抗体検査とは異物に結合する抗体があるかどうかを調べる検査ということです。

新型コロナウイルスに関連する検査を例に挙げると、抗原検査では体内に異物であるコロナウイルスが存在するかどうか、言い換えると、現在、新型コロナウイルスに感染しているかどうかが分かります。これに対して、抗体検査では新型コロナウイルス抗体を持っているかが分かります。新型コロナウイルスがあれば、過去に感染していたことが分かります。また、ワクチンによっても抗体は作られますので、ワクチン接種によってできた抗体も検出することができます。

次に抗原検査、抗体検査の原理について解説していきます。コロナウイルス専用の抗体は、抗原である新型コロナウイルスのみに結合し、そのほかの異物、例えばインフルエンザウイルスには基本的には結合できません。抗体にみられる、決まった異物としか結合しない特徴は抗体の「特異性」と言われています。

抗原検査の仕組み

あらかじめ新型コロナウイルス専用の抗体を用意しておいて、調べたい検体を混ぜた時、検体の中に、抗原である新型コロナウイルスが存在していたら、抗体が結合します。反対にウイルスが存在していなければ抗体は結合できません。そこで、抗体が結合したかどうかを確認できるように工夫したものが新型コロナウイルスの抗原検査です。

抗原検査では、イムノクロマト法という方法が広く用いられています。イムノクロマト法では細工を施した2種類の抗体が使用されます。

まず一つ目は目印として色をつけた抗体。この色がついた抗体がくっつくことによって、検体中の新型コロナウイルスに目印がつけられます。

もう一つの抗体は検体の通り道に固定された新型コロナウイルス抗体です。もし新型コロナウイルスが含まれていなければ検体は素通りしていきますが、新型コロナウイルスが含まれていれば、抗体にキャッチされて固定されます。固定された新型コロナウイルスには目印として色がついているため、キャッチされていることが目視で分かり、陽性だと判定できるという仕組みです。

イムノクロマト法の特徴として挙げられるのが、簡単に短時間で結果を判定できることです。検体をのせて15分ほど待ち、色の有無で結果が分かるため、非常に手軽にできる検査です。

抗体検査の仕組み

抗体検査は大きく2つに分類することができます。一つ目は抗体を持っているかいないかのみを調べる検査(定性検査)、もう一方は抗体の量を測定する検査(定量検査)です。

このうち、定性検査では一般的に抗原検査と同様にイムノクロマト法が用いられています。抗体検査の場合、検出したいのは「抗体」ですから、コロナウイルス抗体と結合する抗体が使用されます。少し分かりにくいですが、コロナウイルス抗体を異物だと認識する抗体をあらかじめ用意しておいて、コロナウイルス抗体の有無を調べるという方法です。

抗体量を測定する定量検査では、ELISA法や類似のECLIA法という方法などが用いられています。これらの検査には専用の試薬や機械が必要となるため、検査所で結果の判定を行うのが一般的です。そのため、基本的には病院か、または郵送検査を利用することになります。イムノクロマト法ほど簡単ではない代わりに精度が高く、微量なサンプルの測定や、細かい数値まで調べることができます。

ELISA法も、基本的にはイムノクロマト法と似た仕組みになっており、2種類の細工を施した抗体、つまり、目印付き抗体と固定するための抗体を用います。異なるのは「目印付き抗体」のほうです。ELISA法では化学反応を促進する「酵素」を目印に用います。酵素を目印に使うことで感度が高く、細かい数値まで測定できる検査となっています。

まとめ

最後に、抗体検査の仕組みや特徴をまとめます。 今、新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる抗原検査とは異なり、抗体検査は新型コロナウイルスと戦う抗体を持っているかどうかを調べる検査です。抗体検査には大きく分けて2種類、抗体の有無を調べる定性検査と抗体量を調べられる定量検査があります。ご自身の新型コロナウイルス抗体の有無やその量を調べたいときには抗体検査を受けてみてください。

獲得免疫の仕組み

免疫は、身体の健康を維持するために必要不可欠で大切なシステムです。具体的には、免疫によってウイルスや細菌などの病原体から身体を守ったり、がん細胞や不要な細胞を排除したり、傷ついた組織を治したりしています。免疫は、仕組みによって自然免疫と獲得免疫の2つに分けられます。

自然免疫は生まれつき身体に備わっている仕組みで、身体に侵入した異物に対してすぐに反応します。

一方、獲得免疫は、それぞれの異物に対する攻撃方法を記憶する後天的な仕組みで、同じ病原体が再び身体に侵入したときに、記憶している情報をもとに効果的に病原体を攻撃します。一度かかった病気にかかりにくくなったり、ワクチンで病気の発症や重症化を予防できるのは獲得免疫が正常に働いている証拠です。獲得免疫は適応免疫と呼ばれることもあります。

免疫で働く細胞の役割

自然免疫で働く細胞は、好酸球や好中球、好塩基球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞などです。例えば、自然免疫では、細菌やウイルスなどの病原体を認識すると、マクロファージや好中球などの細胞がすぐに駆け付けて病原体を攻撃し、排除します。

獲得免疫で働く細胞には、T細胞やB細胞があります。

T細胞は、役割によってヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞に分けられます。ヘルパーT細胞には、異物が身体にとって危険か判断し、攻撃の方法を練る司令塔のような役割があります。キラーT細胞は、ヘルパーT細胞の指示を受け、病原体に感染した細胞を攻撃し、破壊します。制御性T細胞は、それぞれの細胞の暴走を抑え、免疫が正常に働くように調整します。

B細胞は、ヘルパーT細胞の指示を受けて形質細胞へと成熟し、異物を攻撃するための抗体を放出します。

新型コロナウイルスワクチンの副反応と抗体量

新型コロナウイルスに対するワクチンを接種すると、新型コロナウイルスに対抗するための抗体が身体の中で産生されます。ワクチン接種によって、十分な量の抗体が身体の中に準備されていれば、高い予防効果があると考えられています。

 

一方で、新型コロナウイルスに対するワクチン接種後に抗体反応が大きい人ほど、副反応が強く出る傾向があるという報告があります。抗体反応とは、B細胞が産生した抗体が病原体を認識して、毒性を弱める反応です。

アメリカの研究チームが行った研究*1によると、成人928名を対象として、ファイザー社またはモデルナ社のワクチン接種後の抗体量と副反応の関連について調べたところ、ワクチン接種後に発熱や悪寒、筋肉痛などの副反応が出た人の方が、注射部分に痛みや発疹があっただけの人や副反応が全くなかった人に比べて抗体反応が大きい傾向があったそうです。

また、日本国内の335名を対象に、ワクチン2回接種後の抗体量と副反応の関連を調べた研究*2によると、接種後に発熱を認めた人は発熱がなかった人に比べて抗体量が高い傾向があることがわかっています。なかでも、38度以上の発熱を認めた人は37度未満であった人に比べて、平均約1.8倍の抗体量であったことが明らかになっています。

抗体量だけでなく、抗体産生に関わるヘルパーT細胞やキラーT細胞と副反応の関連について調べた国内の研究*3によると、ワクチン接種後にヘルパーT細胞の反応が遅い人では、キラーT細胞の活性化や抗体量だけでなく、副反応の頻度も低いことがわかっています。

つまり、今まで報告されているいくつかの研究結果を見ると、新型コロナウイルスのワクチンで副反応が出やすい人の特徴は、ワクチン接種後に抗体産生に関わる細胞の反応が早く、抗体量も多い人と言えます。

引用文献

*1:JAMA Netw Open. 2022;5(10):e2237908. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.37908

*2:Vaccine Volume 40, Issue 13, 18 March 2022, Pages 2062-2067 doi:10.1016/j.vaccine.2022.02.025

*3:Nat Aging 3, 82–92 (2023). doi:10.1038/s43587-022-00343-4

ワクチンってなに?

私たちの身体は、細菌やウイルスなどの病原体に感染すると、原因となる病原体に対する抵抗力がつきます。抵抗力のことを免疫ということもあります。免疫ができると、同じ病原体に感染しにくくなったり、感染しても症状が軽くて済むようになります。このような身体の仕組みを利用して、病原体そのものか病原体を構成する成分などをもとに作られているワクチンをうつと、その病原体に対する免疫ができます。

ひとことでワクチンといっても、さまざまな種類があります。例えば、生ワクチン、不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、mRNAワクチンなどです。新型コロナウイルスのワクチンは、mRNAワクチンです。

ワクチンをうつと細菌やウイルスにかかってしまうのではないかと心配する方がいますが、生ワクチン以外であれば細菌やウイルスそのものに感染することはありません。生ワクチンであっても、病原性を弱めたものからできているので病気の症状が強く出ることはないと考えられています。

新型コロナウイルスのワクチンの効果は?

新型コロナウイルスに対する予防法の1つとしてワクチンが注目を集め、今では世界各国で接種されています。気になるのがワクチンの効果ですが、臨床試験の結果を見ると、ファイザー社とモデルナ社のものでは新型コロナウイルスに感染するリスクが約95%減り、アストラゼネカ社のものでは約76%減ったと報告されています。

千葉大学病院コロナワクチンセンターで行われた研究によると、ファイザー社のワクチンを2回接種した1774名のうち、1773名においてコロナウイルスに対する抗体価が上昇しており、ワクチンの効果が明らかになりました。コロナウイルスに対する抗体価の上昇は、コロナウイルスに対する免疫がついたということを意味します。

抗体価に影響を与える要因としては、新型コロナウイルスの感染歴、1回目と2回目のワクチン接種間隔、抗アレルギー薬の内服、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドの服用、飲酒頻度が挙げられました。新型コロナウイルスの感染歴がある人や抗アレルギー薬を内服している人は抗体価が高くなりました。また、1回目と2回目のワクチン接種の間隔が長い(22~25日)ほど、短い(18~20日)人に比べて抗体価が高くなることがわかりました。免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドを内服している人や飲酒の機会が多い人は、抗体価が低くなることも明らかになりました。

新型コロナウイルスのワクチンの追加接種の効果は?

日本人を対象とした研究でも、新型コロナウイルスのワクチンの効果があることがわかりましたが、ワクチンの効果がどれくらい続くのか気になる方も多いのではないでしょうか。

千葉大学の報告によると、新型コロナワクチンの2回目接種後に上昇していた抗体価は、8か月経過すると3分の1に減少していることがわかっています。つまり、ワクチンの効果は時間経過とともに低下してしまいます。ただし、3回目の追加接種を行うと、2回目の接種後の抗体価に比べて10倍以上上昇していました。つまり、追加接種を行えば、ワクチンの効果の維持を期待できます。

私たちの身体は、一度感染した細菌やウイルスに再び感染すると、免役が記憶しているので1回目よりも早く対応できます。3回目接種後の抗体価が2回目接種後よりも高くなったのは、このような身体の仕組みによる上乗せ効果であると考えられています。

抗体は獲得免疫で働くタンパク質で、リンパ球の一種であるB細胞によって産生・分泌されます。ウイルスのような病原体などにくっつくことで、その働きを抑えたり、マクロファージなどの自然免疫系細胞が病原体を食べるのを促したりすることで、生体防御において欠かせない役割を担っています。

B細胞はウイルスなどの侵入を察知して抗体を分泌しますが、体内に抗体があればウイルスがいるのかというと、そうとも限りません。体内に抗体があることは、何を意味するのでしょうか。

今回は抗体の作られ方や種類、機能について、少し専門的な内容に踏み込んでご説明したいと思います。

B細胞の成長と抗体の作られ方

B細胞は骨髄(骨の中)で生まれ、1つのB細胞は1種類の抗体しか作れません。骨髄では1つ1つのB細胞がランダムに遺伝子を組み換えられることで、さまざまな抗体を作るB細胞が作られます。それらの中には、自分の体の細胞やタンパク質(自己抗原)にくっつく抗体を作ってしまうものもあり、そういったB細胞は骨髄内で排除されます。

骨髄で選び抜かれたB細胞たちは、仕事未経験の新人B細胞(ナイーブB細胞)として血中に放出されますが、このままではまだ闘えません。病原体などの敵の特徴を知り、新人B細胞からベテランB細胞(エフェクターB細胞)に成長しなければ、抗体の量産・分泌ができないのです。

B細胞などのリンパ球が、敵の情報を得る基地を二次リンパ器官と言い、小腸や脾臓、全身に分布するリンパ節が該当します。

二次リンパ器官では情報獲得だけでなく、抗体が特定の病原体にくっつく能力を強化する作業も行われます。敵の特徴に合う抗体を作れる新人B細胞は、二次リンパ器官でさらに増殖し、骨髄内と同じように遺伝子を組み換えられます。遺伝子組み換えによって抗体の接着力が上がった新人B細胞はやがてベテランB細胞となり、抗体の量産・分泌ができるようになります。接着力が上がらなかった新人B細胞は死んでしまうか、再び遺伝子を組み換えて抗体を作り直します。そうして時間の経過とともに、抗体の接着力も強くなっていきます。

※成熟したリンパ球(B細胞やT細胞)が免疫を獲得する場である二次リンパ器官に対し、リンパ球の成熟を司る骨髄のような組織を一次リンパ器官と言います。

抗体の種類

同じウイルスなどの異物にくっつく抗体でも、役割や活躍場所の違いによって以下5つの種類に分類されます。

〈IgM〉

ヒトが持つ抗体のうち約10%を占め、5つの抗体が環状に繋がった形をしています。獲得免疫応答の初期に産生・分泌された後、IgGの増加とともに減っていきます。抗体1つあたりの接着力は弱めですが、5つ合体することでそれを補っています。腕1本だと力が足りないから、腕の数を増やした、というイメージです。

〈IgG〉

ヒトが持つ抗体のうち約70~75%を占め、血中に最も多く含まれています。抗体1つあたりの接着力はIgMより強く、獲得免疫応答の中盤から産生・分泌されます。血中だけでなく、臓器や組織にも入り込むことができます。獲得免疫系には、一度感染した病原体を長期間記憶し、再感染時により早く抗体を分泌する能力がありますが、そういった長期的な免疫もIgGが担っています。

〈IgA〉

ヒトが持つ抗体のうち約10~15%を占め、多くは2つの抗体が繋がった形をしています。胃腸内や口の中、涙腺、気管、乳腺などの粘膜に多く存在しています。胃腸などは外の物が入ってくるところなので、ここから病原体などが侵入しないように守っています。

〈IgE〉

ヒトが持つ抗体の0.001%にも満たない量しか作られず、寄生虫に対する攻撃に使われます。寄生虫感染が少ないところでは、アレルギーの発症に関与しています。

〈IgD〉

ヒトが持つ抗体の1%以下を占め、B細胞の抗体作りを促進すると考えられていますが、詳しいことはよく分かっていません。 感染症の抗体検査では、主にIgGやIgMの量が見られます。

抗体の有無から分かること

抗体は、病原体などが侵入したときに作られますが、抗体があるからといって必ず病原体が存在するわけではありません。

獲得免疫が働くと抗体が徐々に増えていき、やがて病原体は駆除されます。その後抗体はゆっくり減っていくため、体内から病原体がいなくなっても抗体はしばらく残ります。この状態で体を調べた場合、抗体は検出されますが、病原体は検出されません。

抗体の有無から分かることは、「その病原体に感染したことがあるかどうか」そして、「その病原体に感染してから大体どのくらい経っているか」の2つです。

抗体は感染時に作られるため、抗体の有無から感染歴が分かります。また、獲得免疫反応の最初に現れるIgMと、中盤から現れるIgGがそれぞれどのくらいあるかを調べれば、その病原体に感染してどのくらい経っているかがおおよそ分かります。しかし、これには個人差があるため、あくまでも「おおよそ」の時期しか分からず、特定はできないことに注意が必要です。

新型コロナウイルスにおいては、日本人の場合、IgMよりIgGの方が先に増加する傾向にあることが報告されており、上記の判定方法が適応されない場合もあるようです。

まとめ

抗体は感染時に作られ、病原体などの異物の働きを抑制するタンパク質ですが、病原体が駆除されてから減っていくため、体内に病源体がいなくても抗体が検出される場合があります。 病原体への感染歴や感染からの大まかな経過時間が、抗体の有無から読み取ることができます。

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、これまで屋内では原則マスクを着用するよう推奨されてきました。しかし、2023年3月13日からは、マスク着用は個人の判断で行うようにと、ガイドラインが緩和されます。

どんな場面で、マスクを外してもよいのか厚生労働省のガイドラインをもとに確認してみましょう。

マスクを外しても良い場面

今後は、屋内・屋外問わず、マスクの着脱は個人の判断に委ねられます。

息苦しいマスクを外せることに解放感を覚える人がいる一方で、2022年6月に児童5,000人余りに対して見識者が行った意識調査では、2~3割のこどもがマスクを外すことに抵抗を覚えていることが分かる結果になっていました。

現在でもこどもに限らず、大人のなかにも抵抗感がある方は少なからずいると思われます。 本人の意思に反して、周囲からマスクの着脱を強いることがないようにすることが肝要です。

マスクの着用が推奨される場面

一方で、これまで通り、マスク着用が推奨されているのは、以下のような場所です。

■医療機関への受診時

病院やクリニックなど、医療機関を受診する際は、周囲の方に感染を広げないようマスクを着用しましょう。

■医療機関や高齢者施設などを訪問するとき

重症化リスクの高い、高齢者や基礎疾患を持つ方に感染を広げないよう、これらの施設を訪問する際はマスクを着用しましょう。

■通勤ラッシュ時などで、混雑した電車・バス

都市部の通勤ラッシュ時は、特に他人との距離が保てず、ごく近距離になることが多くなります。そのため、周囲に感染を広げないためだけでなく、特に高齢者や基礎疾患を有する方、妊婦の方などはご自身を感染から守るためにもマスク着用が効果的です。

 

ざっくりまとめると、

・屋外・屋内問わず原則マスクは外してOK

・室内で混雑した場所や、感染リスクの高い方が多くいる場面では、マスク着用が推奨

といった感じでしょうか。

個人個人が、周囲の人に思いやりをもった行動をできるといいですね。

マスク着用が推奨されないからといって、新型コロナウイルスがなくなったわけではありません。引き続き、手洗いうがいなどの感染防止対策は継続したいところです。

マスクを外しても大丈夫?

このように、屋外だけでなく、マスクを外すタイミングが増えると、どうしても気になるのが新型コロナウイルスに対する身体の防御能です。

一般的に、特定の感染症にかからないためには、その病原体に対する抗体を持っている必要があります。また、体質や体調にもよりますが、たくさんの抗体があると、病原体がスムーズに排出され、感染が成立しないとされています。

株式会社リプロセルでは、新型コロナウイルスに対する抗体量を数値化する「コロナ抗体量免疫検査」を販売中です。

この検査では、病院に行かず、自宅で簡単に新型コロナウイルス抗体量の具体的な数値を確認することができます。つまり、今のあなたの新型コロナウイルスに対する防御能の目安がチェックできます!

・ワクチンを打ってから時間が経って、高い抗体量が維持できているか不安

・感染からしばらく経って、どのくらい抗体が残っているか気になる

・ワクチンの副反応が少なかったので、実際の抗体量が知りたい

そんな方にお勧めの検査サービスとなっております。 ご自身の新型コロナウイルス抗体量が知りたい方はこちらをご覧ください。

抗体とは、病原体が体内に侵入したときに一部の免疫細胞(B細胞)が作るタンパク質です。ウイルスや菌などの病原体や、毒素といった異物(抗原)にくっつくことで、それらの働きを抑え、体の中で悪さをしないようにします。

ここでは免疫やワクチンのしくみをはじめとして、抗体量の変化についてご説明したいと思います。

自然免疫と獲得免疫の関わり

免疫は、自然免疫と獲得免疫の2種類に分けられます。

自然免疫は、私たちの体に生まれつき備わっている免疫です。病原体などの異物が体内に侵入すると速やかに働き、幅広い病原体に対応することができます。

自然免疫を担うマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞は、病原体を食べて分解することで駆除します。しかしこれらは効率が悪く、攻撃相手も定められないため、自然免疫だけでは病原体を駆除しきることができません。

そこで登場するのが獲得免疫です。獲得免疫は、生後さまざまな病原体の感染を通じて身に付く免疫で、特定の病原体を強く攻撃します。

獲得免疫を担うのはリンパ球と呼ばれる免疫細胞で、リンパ球にはT細胞とB細胞の2種類があります。T細胞は、病原体に感染した細胞の破壊や免疫細胞の活性化を行い、B細胞は1つの病原体に対する抗体をたくさん作って分泌します。

獲得免疫は1つの病原体だけを集中攻撃できることに加え、抗体を使えば、弓矢のように攻撃範囲を広げることができます。そのため獲得免疫は、自然免疫よりも効率良く病原体を駆除することができます。

ただし獲得免疫には、感染から発動までに時間がかかるという欠点があります。

獲得免疫で病原体を狙い撃ちするには、リンパ球がその病原体の特徴を把握し、攻撃の準備をしなくてはならないからです。

リンパ球は敵(抗原)に出会う前と後で性質が変わり、出会う前はまだ仕事ができない新人(ナイーブ細胞)ですが、出会った後は仕事ができるベテラン(エフェクター細胞)に成長します。

獲得免疫が働くまでの間、自然免疫系細胞は病原体の足止めをしながら、食べた病原体の情報を新人T細胞に教えます。これによって、新人T細胞は活性化されてベテランT細胞になり、病原体に感染した細胞の特徴が分かるようになったり、他の免疫細胞の活性化ができるようになります。

B細胞は、自分でも病原体の情報を獲得し、T細胞に教えます。1つのB細胞は1種類の抗体しか作れないため、体の中には膨大な種類の新人B細胞が存在し、各種一定数用意されています。それらの新人B細胞のうち、侵入した病原体によくくっつく抗体を作れるものだけが活性化・増殖してベテランB細胞となり、抗体を量産します。

このように、2つのリンパ球は病原体の情報を得てから、その病原体専用の免疫システムを1から構築する、という作業を感染後に行うため、獲得免疫の発動に時間を要してしまうのです。

自然免疫と獲得免疫は互いに欠かせない存在であり、この2つの免疫の共闘によって、私たちの体は守られています。

免疫記憶とワクチン

獲得免疫は発動が遅いという話をしましたが、同じ病源体でも初感染時と二度目以降では、獲得免疫が発動する早さが違います。獲得免疫を担うリンパ球には、一度出会った病原体を記憶する能力があるためです。

この獲得免疫の免疫記憶を利用した予防医療がワクチン接種です。

ワクチンは弱毒化・無毒化した病原体で作られています。感染前にワクチンを投与して、リンパ球に病源体の情報を教えておけば、その病原体専用の獲得免疫システムをあらかじめ作らせることができます。その状態で感染しても、獲得免疫が素早く反応し、重症化を防ぐことができるのです。

新型コロナウイルスワクチンの場合、新型コロナウイルスのタンパク質や遺伝物質(DNAやRNA)などがワクチンとして使われています。これらのワクチンを投与すると獲得免疫が働き、リンパ球は新型コロナウイルスにくっつく抗体の作り方や、新型コロナウイルスに感染した細胞の識別・破壊方法を学習します。これによって、新型コロナウイルスに対する獲得免疫のシステムが感染前に作られ、感染後の重症化を防げるしくみになっています。

免疫記憶と抗体量の変化

リンパ球が初めて病原体と出会ったとき(初感染時やワクチン接種1回目)の免疫反応を一次免疫、再度同じ病原体に出会ったときの免疫反応を二次免疫と言います。

一次免疫で病原体の情報を得て活性化したベテランB細胞は、抗体を産生・分泌します。このとき、時間をかけて血中の抗体量が増えていきます。

その後、病原体を駆除しきったエフェクターB細胞は、一部を記憶細胞(メモリー細胞)として残すとほとんどが死んでしまうため、抗体量も減っていきます。そして再度同じ病源体が体内に侵入したとき、つまり二次免疫ではすぐに記憶細胞が増殖し、速やかに抗体を産生・分泌するため、抗体量も再び増加します。その後また身体の回復が進むと、数週間かけて抗体量も減っていきます。

一次免疫より二次免疫の方が抗体の増加スピードが速く、作られる抗体量も多いため、感染歴やワクチン接種歴の有無によって免疫力の個人差も大きくなってきます。これはコロナウイルスにおいても、同じ傾向が見られます。

まとめ

抗体は病原体などの異物の侵入に際し、リンパ球の1種であるB細胞によって作られます。免疫反応の進行状況や異物の駆除具合でB細胞の量が変化し、それに伴って抗体の量も増減します。リンパ球には一度感染した病原体の情報を記憶する能力があるため、感染歴やワクチン接種歴の有無で抗体の量や増加スピードが変わり、免疫力にも個人差が出てきます。

新型コロナウイルスの抗体検査には、実はさまざまな種類があります。病院で受けるものもあれば、自宅で簡単に行える検査キットもあります。また、抗体量を数値で確認できるものもあれば、抗体の有無しか調べられないものもあります。

本コラムでは、抗体検査の種類、それぞれのメリット・デメリット、検査の実施手順について詳しく解説します。

「抗体の有無のみを判定する検査」と「抗体量を数値化できる検査」

新型コロナウイルスの抗体検査には、抗体の有無のみを判定する検査(定性検査)と抗体量を数値化できる検査(定量検査)の2種類があります。

<新型コロナウイルスの抗体検査の種類>

抗体の有無のみを
判定する検査
(定性検査)
抗体量を数値化できる
検査
(定量検査)
検査対象新型コロナウイルスに対する抗体
(抗体の種類はキットやサービスにより異なります。
販売名称としては、中和抗体、IgG、IgM、スパイクタンパク質に対する抗体などの記載があります。)
測定場所自宅で採血
→その場で結果を確認
病院または自宅で採血
→検査施設へ発送
測定時間5~15分1~2日
検査費用約2,000~3,000円約5,000~10,000円
メリット・短時間で行える
・費用が安い
・抗体を数値で確認できる
デメリット・抗体を数値で確認できない・結果確認までに数日要する
・費用が高い
・受診または郵送が必要

定性検査は、Web上で「迅速検査」「スピード検出」という説明で販売されているもので、測定時間が短く費用も安く抑えられます。ただし、ご自身の抗体量を数値で確認できるものではないため、「抗体量が今どれくらいかを調べたい」と思われている方には不向きです。

2023年2月25日時点で、新型コロナウイルスのワクチン接種を終えたのは、全人口の77%を超えており、多くの方が多少なりとも新型コロナウイルスの抗体を保有していると言えます。つまり、定性検査を実施したとしても、多くの方の結果が「抗体あり」となることが予想されます。

一方、定量検査は測定に数日の時間を要しますが、抗体量を数値で確認でき、新型コロナウイルスへのかかりにくさの程度をより詳しく知ることができます。抗体を保有していることが分かっても、量が少なければ新型コロナウイルスに対する防御能は低くなってしまうため、具体的な抗体量の数値を調べることは重要であると言えます。

また、病院へ受けにいく以外に、自宅で簡単に行える検査サービスもあります。その場合は自宅での採血後に検体を検査施設へ郵送します。

「抗体量を数値化できる検査」は、受診/郵送が必要なのはなぜ?

「抗体量を数値化できる検査」は、ELISA法または類似のECLIA法という検出法が用いられています。この検出法の結果判定には、専用の試薬と高度な検査機器が必要であるため、採血後に検査施設へ検体を発送する必要があります。

なお、病院によっては、試薬と機器を持っており、病院内で測定ができることもあります。

一方、「抗体の有無のみを判定する検査」は、イムノクロマト法という検出法が利用されています。この検出法は、妊娠検査薬にも使われているもので、検体を滴下して一定時間放置すると、結果を目視で確認できます。特別な検出機器を必要としないため、自宅で簡単に行えます。

「抗体量を数値化できる検査」の実施手順-自宅で採血できる検査サービス

「抗体量を数値化できる検査」は、”病院で受ける”または”自宅で採血して発送する”の2つの方法があります。今回は、自宅で採血する検査サービスの実施手順について、株式会社リプロセルが提供する「コロナ抗体量免疫検査」を例に紹介します。

 

<抗体量を数値化できる検査サービスの実施手順>

1. Webサイトから申込み

2. 採血キットが発送される

3. 自宅で採血

4. 血液を検査施設へ発送(ポストイン可)

5. 検査施設で検査

6. Web上のマイページから結果を確認

 

「1.Webサイトから申し込み」~「3.自宅で採血」は自宅で行えるため、病院で受ける検査のように移動時間や待ち時間が必要ありません。ご自宅で採血したあとの発送は、ポストインも可能なため、お近くのポストに投函するだけです。検査結果もスマホで確認できるため、再度通院する必要がなく、仕事が忙しい方や受診する時間がない方におすすめです。

血液の採取方法は、以下の通り専用器具を指先に押し当てるだけで、操作は簡便です。血液の採取量も微量であるため、どなたでも短時間で行えます。

 

<検査キットの専用器具による血液の採取方法>

 

株式会社リプロセルの抗体検査キットの費用は、4,800円(税込み・往復送料込み)です。新型コロナウイルスに感染した方や以前ワクチンを打った方けれど少し時間が経ち、身体に抗体量がどれくらい残っているか数値で確認したい方は、ぜひ検討してみてください。

前回の記事では、人の免疫には自然免疫と獲得免疫(適応免疫)があり、一度侵入したことのある病原体との戦いでは獲得免疫が大きな役割を果たしていることをお伝えしました。獲得免疫が働く仕組みにも種類がありますが、免疫力強化には「抗体」が重要です。

感染症の不安が続く毎日ですが、抗体を増やし免疫力を高めるにはどうしたら良いのでしょうか。また、自分の抗体がどれくらいあるのか知ることはできるのでしょうか。

この記事では、抗体を増やすための基本的な作戦であるワクチンと抗体の関係、そしてワクチンの効果を確認するための方法を解説します。

ワクチンを打って抗体を増やす

抗体を増やすための方法として基本であり中心となるのが、ワクチンです。すでに多くの方が実践されていますが、初めの頃は予約が中々取れないことが問題になったり、ファイザーとモデルナどちらが良いのか議論されたり、非常に身近な話題となっていますよね。

ワクチンの歴史は古く、1798年にイギリスで牛がかかる天然痘を用いた天然痘予防の論文が報告されたのが初めてと言われています。現在では様々な疾患に対するワクチンが開発され、日本ではB型肝炎や四種混合ワクチンなど多くの予防接種が義務化され多くが赤ちゃんのうちに実施されています。

ワクチンは病原体の一部や病原性を弱めたものを体内に入れ、獲得免疫をつけることを目的としています。獲得免疫はワクチンに含まれる成分や、ワクチンを接種したことにより体内で合成される成分を認識し、抗原として記憶します。病原体を記憶した獲得免疫は、実際に病原体が体内に入ってくると迅速に反応し、効率よく働くことができます。

各々の病原体は異なる特徴を持つため、それぞれに対応したワクチンが必要です。例えば季節性インフルエンザは流行するウイルスが持つ特徴が毎年変化するため、毎年流行すると予想される株に対応したワクチンを接種する必要があります。新型コロナウイルスもどのように変化していくかは分からず、今後も継続してワクチン接種が必要になるかもしれません。

ワクチンで免疫力強化!二次免疫応答とは

ワクチンの効果を考える上で重要な体の反応として「一次免疫応答」「二次免疫応答」があります。一次免疫応答というのは、初めて病原体と接した時に起きる免疫の反応のことです。体内では病原体を記憶し、抗体が多く産生されるという応答が発生します。

二次免疫応答は、二回目に病原体と接した時に起きる反応のことで、初回とは違った方法で初回よりも素早く大量の抗体が産生されます。多量の抗体は免疫を強く活性化し、病原体を効率よく排除することができます。

ワクチンはこの仕組みを通じて、免疫力を大幅に強化することができます。言い換えれば、ワクチンにより一次免疫応答をしっかりと得ることが重要である、ということが分かります。

ワクチン不全に注意

免疫力を強化するにはワクチンにより免疫応答を得ることが必須なのですが、ワクチンの効果は100%確実ではありません。ワクチンを打っても一次免疫応答が起きずに、効果が不十分となることがあります。これをワクチン不全といいます。

ワクチン不全の発生にはワクチン自体や投与に関する要因、接種される側の要因があります。ワクチンの要因には保管方法が適切でない場合や使用期限切れ、投与の要因には注射方法や投与量の間違い、接種される側の要因には健康状態や年齢などがあります。

ワクチン不全を防ぐ方法として有効なのが、複数回接種することです。新型コロナウイルスのワクチンを繰り返し接種するのはワクチン不全を防止するとともに、変異していくウイルスに対応するという目的があります。

ワクチンの効果を見る方法

ワクチンを接種し一次免疫応答がしっかり起きているかどうか確認する一つの方法が、抗体検査です。抗体検査は血液を少量採取して、血液中の抗体量を測定する検査です。例えばワクチン接種前と接種後で抗体量を測定し、しっかりと上昇していればワクチンの効果が出ていそうだと考えられます。

また、ワクチンの効果は一定期間が過ぎると減少していくことが知られています。ワクチンの効果がどれくらい発揮されるのか、どれくらいの期間持続するのかは個人差が大きく人それぞれです。自分自身の免疫がどのような状態にあるのか、抗体量検査が一つの判断材料になると考えられます。

ただし現時点では、抗体検査の結果が実際の感染予防や症状軽減にどの程度関係するのか、解明が試みられている段階であり、はっきりとした基準は定められていません。~以上だから大丈夫、~以下だから急いでワクチンを打たねば、という判断ができるまでにはまだ時間がかかることに注意が必要です。

株式会社リプロセルでは、2023年2月22日より、新型コロナウイルスに対する抗体量を調べる検査サービスを開始しました。

なぜ抗体量を調べる必要があるのか?それには免疫の仕組みが大きくかかわってきます。そこで、本コラムでは、今回から10回にわたり「抗体」や「免疫」について解説する「抗体検査がわかる」シリーズをお届けします。

 
 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「免疫」「抗体」「抗原」「ワクチン」など、専門的な用語を日常用語のように耳にするようになりました。「免疫力を高めよう」「ワクチンを打って抗体を増やす」「抗原検査」よく聞きますよね。

これらの用語、意味は分かっているつもりでも何となくよく分からない、抗体検査と抗原検査の違いって何?など疑問に感じることがあるのではないでしょうか。

この記事では免疫や抗体といった基本的な用語の意味についておさらいし、ウイルスと共存していくため私たちはどのように行動するべきなのか、ヒントを探していきたいと思います。

免疫って何?まず活躍する自然免疫

免疫とは、病原体などの異物から体を守るために備わった仕組みのことです。体に病原体が入ってくると体内の免疫を担当する細胞がいち早く発見し、反応します。異物を発見した免疫細胞は病原体に対して直接作用し、穴をあけるなど攻撃をしかけます。また時には病原体を丸ごと取り込み無力化させます。

このように、侵入してきた病原体を最初に認識して排除しようとする仕組みを「自然免疫」といいます。好中球やマクロファージ、樹状細胞という免疫細胞などがその機能を担当しています。自然免疫は多くの異物や病原体に対して反応することができますが、一度反応してもその後、特別に機能が強化されることはありません。

免疫って何?獲得免疫とは

誰もが持ち、最初に働く免疫が「自然免疫」であるのに対して、人の免疫は一度ある病原体に反応すると同じ病原体が侵入してきた時、効率よく反応する仕組みを持っており、それを「獲得免疫(または適応免疫)」といいます。

獲得免疫は病原体を記憶し、同じ病原体に遭遇しても感染や発症を防ぎ、発症したとしても軽症で済むように対応します。自然免疫と獲得免疫はお互いに作用することで、免疫反応の効果を最大限に発揮させることができます。

獲得免疫について、続いて詳しく見ていきましょう。

抗体って何?獲得免疫や抗原との関係とは

病原体を認識して効果的に免疫反応を発揮する獲得免疫ですが、人の免疫が認識した病原体(の目印)を「抗原」と呼びます。獲得免疫は抗原を認識すると、2種類の方法で病原体を攻撃し排除します。

一つは「細胞性免疫」と呼ばれるもので、細胞が病原体を直接攻撃する方法です。マクロファージや細胞障害性T細胞という細胞が活性化し、病原体や感染した細胞を攻撃します。

もう一方が「液性免疫」です。リンパ球の一種であるB細胞が抗原を認識すると「抗体」を大量に産生します。抗体は血液を通って体中に広がり、抗原に結合します。抗原に結合した抗体は免疫反応を強力に活性化し、迅速に病原体を排除します。

B細胞の一部は抗原の情報を記憶した「メモリーB細胞」となり、同じ病原体が侵入してきた時迅速に、大量に抗体を産生することで高い免疫力を発揮します。

ちなみに「抗原検査」というのは「人の唾液や鼻、のどに病原体がいるかいないか」を調べる検査です。それに対して「抗体検査」は「人の血液中に抗体がどれくらいあるか」を調べる検査です。

「抗体」は病原体が入ってくるとB細胞により産生され、感染がおさまってもしばらく血液中に残っています。ですから、抗体量の数値は「現在感染しているか」ではなく「感染したことがあるか、またはワクチンが効いているかどうか」を示しているということになります。

免疫力の正体とは

人の免疫は自然免疫、獲得免疫がお互いに作用することで効果的に力が発揮されます。両者とも重要な働きをするため、どちらのほうが大事ということはありません。免疫力は体の健康そのものですから、健康的な生活やストレスの軽減といった包括的な考え方が重要です。

その上で、今世界を席巻している感染症に備えるにはどうしたら良いのでしょう?

そのキーワードとなるのが、獲得免疫です。人の体は病原体、抗原を記憶することができるため、流行している病原体が分かっていればあらかじめ体に覚えさせておくことができます。そうすれば、例え病原体が体内に侵入してきたとしても抗体を速やかに産生し、高い免疫力を発揮することができるのです。

自分の免疫力を把握するのは簡単ではありませんが、特定の病原体に対する免疫力は抗体量が参考になります。自身がどのように行動するべきかの判断材料として、抗体量検査が有用になるケースが増えていくと考えられます。

以上、免疫や抗体の基本的な事柄について解説させていただきました。 次回は抗体とワクチンの関係、ワクチンの仕組みについて解説します。

抗体と抗原

「抗原」とは病気の原因となる物質です。免疫学では、抗原は「抗体と反応する(抗体を産生させる)分子」を指します。厳密には、すべての抗原がそれ自身だけで抗体産生を誘導できるわけではなく、抗体産生を誘導できる抗原は免疫原と呼ばれます。

「抗体」は、抗原に対抗して人体の中で作られる物質です。抗体は特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から排除する役割を持っています。

新型コロナウイルスを例にすると、抗原は新型コロナウイルスそのものまたは一部であり、抗体は新型コロナウイルスを排除するために結合するタンパク質です。上述の通り、基本的に抗体は元から体内にあるものではなく、抗原が体内に入ってはじめて作られる物質です。

抗原に対して感染を防ぐ効果を発揮する抗体ですが、1種類の抗体は1種類の抗原にしか結合できません。そのため、例えば、インフルエンザに対応して体内にできた抗体は、新型コロナウイルスを防ぐことはできません。

抗体検査

抗体検査とは、「抗体が体内にあるか」を調査する検査です。つまり、「過去に抗原が体内に侵入して、抗体が作られたかどうか」を調査する検査であり、感染状況や感染時期を特定する検査ではありません。
抗体検査には、抗体の有無のみを調べる検査と、抗体の量を調べる検査があります。
抗体検査の量を調べる検査で、抗体がたくさんあることが分かれば、抗原が体内に侵入したとしても迅速に排除できる可能性が高いと判断できます。

抗体はどうやってできる

実際に抗原が体内に侵入した場合を例に、抗体が作られる過程を紹介します。

まず、免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞などが体内に侵入した抗原を発見します。マクロファージなどは抗原の情報を集め、免疫系の司令塔の役割を持つヘルパーT細胞に伝えます。次に、ヘルパーT細胞は、B細胞に抗原に対して特異的に結合する免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質を放出させます。この免疫グロブリンが「抗体」です。その後、抗体は抗原と結合し、抗原を排除するよう働きかけます。

抗体は実際に感染する他に、「ワクチン」の接種によっても獲得ができます。ワクチンの接種により、上記の免疫反応を模擬的に体内で起こさせるのです。
ワクチンにもいくつか種類があり、最も歴史あるものが「生ワクチン(弱毒化ワクチン)」です。毒性の弱いウイルスそのものを体内へ入れ、免疫反応を起こさせ、抗体を作らせます。はしかや風疹などで従来から日本でもよく使用されてきました。
他にも、毒性を完全になくしたウイルスを用いる「不活化ワクチン」や、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質という物質(抗原の一部)のみを体内に投与する「組換えタンパクワクチン」が挙げられます。
新型コロナワクチンで脚光を浴びた「mRNAワクチン」は、体の中でスパイクタンパク質(抗原の一部)を作り出させ、ここから抗体を作らせるという、新たな技術であり世界で初めての実用化となりました。

ワクチンを使用した場合でも、体内での免疫反応は実際の抗原が侵入した場合と同じであるため、発熱や倦怠感などの副反応が出てしまうことがあります。

抗体量の経時変化

引用元:Norihide Jo et al. Impaired CD4+ T-cell response in older adults is associated with reduced immunogenicity and reactogenicity of mRNA COVID-19 vaccination. Nature Aging 3, pages82–92 (2023)

通常、抗原の侵入に備えて産生された抗体は時間が経つとともに減少していくことが知られています。
図aは京都大学から発表された論文(年齢によるワクチン接種後の免疫反応の違いを示した論文)に掲載されている図表になります。

専門的でわかりづらいかと思いますが、図aについて簡単に解説します。
・Adult:65歳未満(23-63歳)
・Older:65歳以上(65-81歳)
上記の年齢別の検査対象に対して、以下の4期間の抗体量(IgM、IgG)を測定しています。
・Pre:ワクチン接種前
・Post1:1回目ワクチン接種後
・Post2:2回目ワクチン接種後
・3 mo:2回目ワクチン接種3か月後

グラフから、新型コロナウイルスにおいても抗体量は3か月程度で減っていることが伺えます。

抗体量の個人差

本コラムでまとめてきた通り、抗体を作るには、感染した際に体内の免疫反応によって作られるか、ワクチン接種をするかの2通りとなります。
では、抗体量には個人差があるのか、あったとしてどの程度なのか、社内の検査データをもとに解説していきます。

・EさんとFさんは、ワクチン接種は行っていません。二人とも罹患歴があり、罹患後5か月以上経ってから抗体検査を行ったところ、A~Dさんと比べてかなり抗体量が少ないことが分かりました。

基本的にはワクチン接種をしている場合としてない場合で抗体量に差があることがわかります。

・AさんとBさんは、年齢が近い同姓、ワクチン接種日も抗体検査日も同じです。しかし、抗体量には3倍以上の違いがあります。
・CさんとDさんでは、ワクチン接種後から抗体検査日までの経過日数は同程度ですが、多くワクチンを打っているDさんの方が、抗体量が少ない結果となりました。

年齢、罹患歴、ワクチン接種の有無など、個人の状況によって抗体量の差があり、また、似たような状況の人たちの中でも差が出てくることがあるようです。

抗体検査の必要性

基本的に、ワクチンを接種することで抗体を獲得することができます。しかし、「何回摂取していいかわからない。」「4回目、5回目のワクチン接種は本当に必要なのか。」などワクチン接種を今後も続けていくことに疑問を感じている方もいるかと思います。

そういった疑問に対して、抗体量検査は数字でご自身の状態を確認することができます。新型コロナウイルスに感染しないことも大切ですが、感染した際に重症化しづらい状態を作ることも大切です。抗体量が比較的少ない状態であれば、ワクチン接種を積極的に行う、マスクや手洗いを入念に行うなど対策をとることも可能です。
ご自身の健康に関わることなので、感覚に頼った判断ではなく、検査を通して判断されることをお勧めいたします。

リプロセルでは、新型コロナウイルスの抗体量を調べる検査サービスを開始しました。
自宅で気軽に実施できる郵送検査なので、新型コロナウイルスの感染対策としてぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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