新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けの2類相当から5類への変更にあたって
厚生労働省は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、2023年5月8日に「二類相当」から「五類」に変更するという方針を示しました。
今後、個別の課題について議論を進め、措置やスケジュールが示されていくものと思われます。
そもそも、この感染症法というものがどういうものなのか?また、二類や五類という種別がどういう意味のものであるかについて本コラムでまとめていきます。
感染症法とは?
感染症法の正式名称は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」といい、その目的については第一条に記載されています。
第一条 この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
このように感染症法は、様々な感染症に対して、対策や措置をしていく方向性を指し示す法律となっています。
感染症法の第六条では、具体的な感染症に対して感染力や重症化の程度をもとに、感染症を最も重い一類感染症(一類)から季節性インフルエンザなども入る五類感染症(五類)にまで分類わけがされています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000114
各感染症の分類
一類感染症 | 一 エボラ出血熱 二 クリミア・コンゴ出血熱 三 痘そう 四 南米出血熱 五 ペスト 六 マールブルグ病 七 ラッサ熱 |
二類感染症 | 一 急性灰白髄炎 二 結核 三 ジフテリア 四 重症急性呼吸器症候群 (病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る) 五 中東呼吸器症候群(MERS) 六 鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9) |
三類感染症 | 一 コレラ 二 細菌性赤痢 三 腸管出血性大腸菌感染症 四 腸チフス 五 パラチフス |
四類感染症 | 一 E型肝炎 二 A型肝炎 三 黄熱 四 Q熱 五 狂犬病 六 炭疽そ 七 鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く。) 八 ボツリヌス症 九 マラリア 十 野兎と病 十一 前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病であって、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの |
五類感染症 | 一 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。) 二 ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。) 三 クリプトスポリジウム症 四 後天性免疫不全症候群 五 性器クラミジア感染症 六 梅毒 七 麻しん 八 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 九 前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの |
新型コロナウイルスの二類相当から五類への位置付けの変更について
二類感染症とは
厚生労働省では、二類感染症に対して以下のような措置を講じる方向性を明らかにしています。
・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等への措置
・対物:消毒等の措置
正確には、現在、新型コロナウイルスは感染症法上、「新型インフルエンザ等感染症」という分類ですが、2023年1月現在までの新型コロナウイルスに対する措置や考え方は二類相当という見方になっています。
五類感染症とは
五類感染症とは、国民や医療関係者への情報提供が必要な感染症と位置付けられており、上記のような二類感染症に対して行っていたような特別な措置はなく、行政としては発生動向調査をする程度となっています。
位置付けの変更による影響
二類相当から五類へ位置付けが変更されることで、行政や病院の対応は様々な変化が想定されますが、一般の人の生活に影響がある点を3つ紹介していきます。
① 医療費・ワクチンについて
これまで、新型コロナウイルスの医療費の負担やワクチン接種については全額公費負担でしたが、五類感染症の場合には、一部自己負担となります。同じ五類感染症の季節性インフルエンザについては馴染みがあるかと思いますが、ワクチン接種や、症状が出たときの医療費は無料ではなく、一部自己負担で病院にかかっているかと思います。
ただ、こちらについてはいきなり全額自己負担になるのではなく、当面の間、国で負担する議論も行われています。
② 就業制限・外出自粛
二類感染症の陽性が出た場合には、就業制限がされ、外出は自粛するよう案内があります。新型コロナウイルスの陽性が出た場合には、保健所から連絡があり、1週間程度の自粛の案内や、体温の報告の案内などがされていました。
しかし、五類感染症についてはそういったものがなくなります。自己判断で管理をする必要があります。
③ 受診や入院
これまでは、発熱外来など病院を受診する際に制限がありました。五類感染症になった場合、そういった制限がなくなります。
クリニックによっては、引き続き発熱がある方専用の窓口を用意する場合もあるかと思いますので、新型コロナウイルスが五類に変更になったとしても、発熱の際にはかかりつけの病院に相談ください。
マスクの着用について
今回の感染症法上の新型コロナウイルスの位置付けの見直しに伴い、改めて新型コロナウイルスの警戒度について議論が行われています。
その中で、マスクはこれまで、屋内では距離が確保できていて会話をほとんどしない場合を除き着用を推奨されていましたが、発熱などの症状がある人や感染予防の必要がある人など以外には原則不要とすることも検討されています。