抗体って何?免疫力の正体を解説!【抗体検査がわかる:第1回】

株式会社リプロセルでは、2023年2月22日より、新型コロナウイルスに対する抗体量を調べる検査サービスを開始しました。

なぜ抗体量を調べる必要があるのか?それには免疫の仕組みが大きくかかわってきます。そこで、本コラムでは、今回から10回にわたり「抗体」や「免疫」について解説する「抗体検査がわかる」シリーズをお届けします。

 
 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「免疫」「抗体」「抗原」「ワクチン」など、専門的な用語を日常用語のように耳にするようになりました。「免疫力を高めよう」「ワクチンを打って抗体を増やす」「抗原検査」よく聞きますよね。

これらの用語、意味は分かっているつもりでも何となくよく分からない、抗体検査と抗原検査の違いって何?など疑問に感じることがあるのではないでしょうか。

この記事では免疫や抗体といった基本的な用語の意味についておさらいし、ウイルスと共存していくため私たちはどのように行動するべきなのか、ヒントを探していきたいと思います。

免疫って何?まず活躍する自然免疫

免疫とは、病原体などの異物から体を守るために備わった仕組みのことです。体に病原体が入ってくると体内の免疫を担当する細胞がいち早く発見し、反応します。異物を発見した免疫細胞は病原体に対して直接作用し、穴をあけるなど攻撃をしかけます。また時には病原体を丸ごと取り込み無力化させます。

このように、侵入してきた病原体を最初に認識して排除しようとする仕組みを「自然免疫」といいます。好中球やマクロファージ、樹状細胞という免疫細胞などがその機能を担当しています。自然免疫は多くの異物や病原体に対して反応することができますが、一度反応してもその後、特別に機能が強化されることはありません。

免疫って何?獲得免疫とは

誰もが持ち、最初に働く免疫が「自然免疫」であるのに対して、人の免疫は一度ある病原体に反応すると同じ病原体が侵入してきた時、効率よく反応する仕組みを持っており、それを「獲得免疫(または適応免疫)」といいます。

獲得免疫は病原体を記憶し、同じ病原体に遭遇しても感染や発症を防ぎ、発症したとしても軽症で済むように対応します。自然免疫と獲得免疫はお互いに作用することで、免疫反応の効果を最大限に発揮させることができます。

獲得免疫について、続いて詳しく見ていきましょう。

抗体って何?獲得免疫や抗原との関係とは

病原体を認識して効果的に免疫反応を発揮する獲得免疫ですが、人の免疫が認識した病原体(の目印)を「抗原」と呼びます。獲得免疫は抗原を認識すると、2種類の方法で病原体を攻撃し排除します。

一つは「細胞性免疫」と呼ばれるもので、細胞が病原体を直接攻撃する方法です。マクロファージや細胞障害性T細胞という細胞が活性化し、病原体や感染した細胞を攻撃します。

もう一方が「液性免疫」です。リンパ球の一種であるB細胞が抗原を認識すると「抗体」を大量に産生します。抗体は血液を通って体中に広がり、抗原に結合します。抗原に結合した抗体は免疫反応を強力に活性化し、迅速に病原体を排除します。

B細胞の一部は抗原の情報を記憶した「メモリーB細胞」となり、同じ病原体が侵入してきた時迅速に、大量に抗体を産生することで高い免疫力を発揮します。

ちなみに「抗原検査」というのは「人の唾液や鼻、のどに病原体がいるかいないか」を調べる検査です。それに対して「抗体検査」は「人の血液中に抗体がどれくらいあるか」を調べる検査です。

「抗体」は病原体が入ってくるとB細胞により産生され、感染がおさまってもしばらく血液中に残っています。ですから、抗体量の数値は「現在感染しているか」ではなく「感染したことがあるか、またはワクチンが効いているかどうか」を示しているということになります。

免疫力の正体とは

人の免疫は自然免疫、獲得免疫がお互いに作用することで効果的に力が発揮されます。両者とも重要な働きをするため、どちらのほうが大事ということはありません。免疫力は体の健康そのものですから、健康的な生活やストレスの軽減といった包括的な考え方が重要です。

その上で、今世界を席巻している感染症に備えるにはどうしたら良いのでしょう?

そのキーワードとなるのが、獲得免疫です。人の体は病原体、抗原を記憶することができるため、流行している病原体が分かっていればあらかじめ体に覚えさせておくことができます。そうすれば、例え病原体が体内に侵入してきたとしても抗体を速やかに産生し、高い免疫力を発揮することができるのです。

自分の免疫力を把握するのは簡単ではありませんが、特定の病原体に対する免疫力は抗体量が参考になります。自身がどのように行動するべきかの判断材料として、抗体量検査が有用になるケースが増えていくと考えられます。

以上、免疫や抗体の基本的な事柄について解説させていただきました。 次回は抗体とワクチンの関係、ワクチンの仕組みについて解説します。

抗体と抗原

「抗原」とは病気の原因となる物質です。免疫学では、抗原は「抗体と反応する(抗体を産生させる)分子」を指します。厳密には、すべての抗原がそれ自身だけで抗体産生を誘導できるわけではなく、抗体産生を誘導できる抗原は免疫原と呼ばれます。

「抗体」は、抗原に対抗して人体の中で作られる物質です。抗体は特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から排除する役割を持っています。

新型コロナウイルスを例にすると、抗原は新型コロナウイルスそのものまたは一部であり、抗体は新型コロナウイルスを排除するために結合するタンパク質です。上述の通り、基本的に抗体は元から体内にあるものではなく、抗原が体内に入ってはじめて作られる物質です。

抗原に対して感染を防ぐ効果を発揮する抗体ですが、1種類の抗体は1種類の抗原にしか結合できません。そのため、例えば、インフルエンザに対応して体内にできた抗体は、新型コロナウイルスを防ぐことはできません。

抗体検査

抗体検査とは、「抗体が体内にあるか」を調査する検査です。つまり、「過去に抗原が体内に侵入して、抗体が作られたかどうか」を調査する検査であり、感染状況や感染時期を特定する検査ではありません。
抗体検査には、抗体の有無のみを調べる検査と、抗体の量を調べる検査があります。
抗体検査の量を調べる検査で、抗体がたくさんあることが分かれば、抗原が体内に侵入したとしても迅速に排除できる可能性が高いと判断できます。

抗体はどうやってできる

実際に抗原が体内に侵入した場合を例に、抗体が作られる過程を紹介します。

まず、免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞などが体内に侵入した抗原を発見します。マクロファージなどは抗原の情報を集め、免疫系の司令塔の役割を持つヘルパーT細胞に伝えます。次に、ヘルパーT細胞は、B細胞に抗原に対して特異的に結合する免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質を放出させます。この免疫グロブリンが「抗体」です。その後、抗体は抗原と結合し、抗原を排除するよう働きかけます。

抗体は実際に感染する他に、「ワクチン」の接種によっても獲得ができます。ワクチンの接種により、上記の免疫反応を模擬的に体内で起こさせるのです。
ワクチンにもいくつか種類があり、最も歴史あるものが「生ワクチン(弱毒化ワクチン)」です。毒性の弱いウイルスそのものを体内へ入れ、免疫反応を起こさせ、抗体を作らせます。はしかや風疹などで従来から日本でもよく使用されてきました。
他にも、毒性を完全になくしたウイルスを用いる「不活化ワクチン」や、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質という物質(抗原の一部)のみを体内に投与する「組換えタンパクワクチン」が挙げられます。
新型コロナワクチンで脚光を浴びた「mRNAワクチン」は、体の中でスパイクタンパク質(抗原の一部)を作り出させ、ここから抗体を作らせるという、新たな技術であり世界で初めての実用化となりました。

ワクチンを使用した場合でも、体内での免疫反応は実際の抗原が侵入した場合と同じであるため、発熱や倦怠感などの副反応が出てしまうことがあります。

抗体量の経時変化

引用元:Norihide Jo et al. Impaired CD4+ T-cell response in older adults is associated with reduced immunogenicity and reactogenicity of mRNA COVID-19 vaccination. Nature Aging 3, pages82–92 (2023)

通常、抗原の侵入に備えて産生された抗体は時間が経つとともに減少していくことが知られています。
図aは京都大学から発表された論文(年齢によるワクチン接種後の免疫反応の違いを示した論文)に掲載されている図表になります。

専門的でわかりづらいかと思いますが、図aについて簡単に解説します。
・Adult:65歳未満(23-63歳)
・Older:65歳以上(65-81歳)
上記の年齢別の検査対象に対して、以下の4期間の抗体量(IgM、IgG)を測定しています。
・Pre:ワクチン接種前
・Post1:1回目ワクチン接種後
・Post2:2回目ワクチン接種後
・3 mo:2回目ワクチン接種3か月後

グラフから、新型コロナウイルスにおいても抗体量は3か月程度で減っていることが伺えます。

抗体量の個人差

本コラムでまとめてきた通り、抗体を作るには、感染した際に体内の免疫反応によって作られるか、ワクチン接種をするかの2通りとなります。
では、抗体量には個人差があるのか、あったとしてどの程度なのか、社内の検査データをもとに解説していきます。

・EさんとFさんは、ワクチン接種は行っていません。二人とも罹患歴があり、罹患後5か月以上経ってから抗体検査を行ったところ、A~Dさんと比べてかなり抗体量が少ないことが分かりました。

基本的にはワクチン接種をしている場合としてない場合で抗体量に差があることがわかります。

・AさんとBさんは、年齢が近い同姓、ワクチン接種日も抗体検査日も同じです。しかし、抗体量には3倍以上の違いがあります。
・CさんとDさんでは、ワクチン接種後から抗体検査日までの経過日数は同程度ですが、多くワクチンを打っているDさんの方が、抗体量が少ない結果となりました。

年齢、罹患歴、ワクチン接種の有無など、個人の状況によって抗体量の差があり、また、似たような状況の人たちの中でも差が出てくることがあるようです。

抗体検査の必要性

基本的に、ワクチンを接種することで抗体を獲得することができます。しかし、「何回摂取していいかわからない。」「4回目、5回目のワクチン接種は本当に必要なのか。」などワクチン接種を今後も続けていくことに疑問を感じている方もいるかと思います。

そういった疑問に対して、抗体量検査は数字でご自身の状態を確認することができます。新型コロナウイルスに感染しないことも大切ですが、感染した際に重症化しづらい状態を作ることも大切です。抗体量が比較的少ない状態であれば、ワクチン接種を積極的に行う、マスクや手洗いを入念に行うなど対策をとることも可能です。
ご自身の健康に関わることなので、感覚に頼った判断ではなく、検査を通して判断されることをお勧めいたします。

リプロセルでは、新型コロナウイルスの抗体量を調べる検査サービスを開始しました。
自宅で気軽に実施できる郵送検査なので、新型コロナウイルスの感染対策としてぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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